私の一冊2020「電子ブックで読める 私の一冊」

大学教職員が読書の愉しみを「POP」(本の紹介カード)で伝える企画「私の一冊」も、今回で8年目を迎えます。これまで本学図書館は非来館型サービスの充実に向けた取り組みの一つとして電子ブック導入を始めていたこともあり、2020年度のこのコロナ禍においては「電子ブックで読める私の一冊」を図書館長及び各学部図書委員を中心とした教職員に推薦していただきました。お薦めの本を、ぜひリモートで読んでみてください!

※各推薦本の書影をクリックすると電子ブック閲覧ページが開きます。
 学外から閲覧する方法はこちらからご確認ください。→ 学術情報検索・リンク集


 

図書館長 富岡幸一郎先生の私の一冊


『青空の下で読むニーチェ』
  宮崎正弘著,勉誠出版,2018年
Maruzen eBook Library
 
  
ニーチェは今日でも影響を与えつづけるドイツの哲学者であるが、本書は専門の研究者には見えてこない(見ないようにする)ニーチェの多面を指摘した興味深い一冊。三島由紀夫や西部邁など日本の文学者や思想家から、仏教世界とニーチェの関係など、これまでにないユニークな論である。ニヒリズムは死ではなく、生きる希望を与えてくれる哲学であり、まさにニーチェこそ「青空」のようにさわやかで元気をくれる哲学者なのだ。
 

国際文化学部(大学院文学研究科) 大橋一人先生の私の一冊


『謎解きの英文法 冠詞と名詞』

 久野暲・高見健一著,くろしお出版, 2004

 KinoDen

 
  本書は10巻を数える「謎解きの英文法」シリーズの第1弾です。今回、「私の一冊」と言いながら、このシリーズ全体を推薦します。ちなみに、本書の後は『文の意味』『否定』『単数か複数か』『省略と倒置』『時の表現』『使役』『副詞と数量詞』『動詞』そして2018年最新刊の『形容詞』と続きます。その魅力をお伝えするには表紙の「帯」の一節を紹介するのが一番でしょう。本書の帯には「I like an apple (私はリンゴが好きです)という英文がなぜ間違った文か説明できますか?」とあります。みなさん即座に答えられるでしょうか。まずは各巻の帯を見て、興味を持ったらぜひこのシリーズに手を伸ばしてみてください。きっと英文法が好きになりますよ。
 

国際文化学部 ヒース デビッド ジョン先生の私の一冊

                          
『ドナルド・キーン わたしの日本語修行』
 ドナルド・キーン/河路由佳著, 白水社, 2014年
 Maruzen eBook Library
 
 学生の皆さんに勧めたい「私の一冊」は『ドナルド・キーン わたしの日本語修行』です。キーン氏は1922年にニューヨークで生まれ、第二次世界大戦において米兵として敵国日本兵との通訳をした。彼は日本文学を愛し続けて2019年に東京で亡くなった。英語母語話者として日本語を学び、アメリカにおける日本文学理解を飛躍的に高めた。また、翻訳、評論を通じ、現代日本文学の世界的普及に貢献した。ところがキーン氏に日本語、日本文学との決定的な出会いをもたらしたのは、皮肉にも彼が大嫌いな戦争だった。英語母語話者として日本語を学ぶ私は、キーン氏を心から尊敬しており、彼が学習者、研究者、教育者として、日本語とともに歩んだ人生について書かれているこの本がとても面白いと思います。日本語母語話者として外国語を学ぶ学生の皆さんには、是非ともお勧めしたい一冊です。
 

社会学部 矢﨑千華先生の私の一冊


『一億三千万人のための小説教室』(岩波新書 新赤版 786)
 高橋源一郎著, 岩波書店, 2002年
 Maruzen eBook Library
 
 この本には、小説を書くための20の鍵(①~⑳)が記されています。それは、間違いなく小説を書くために必要なものなのですが、それが論文(みなさんにとってのレポートや卒論と言えるでしょう)を書くためのステップにも見えます。もちろん、論文は小説とは異なるテキストなのですが、それを書くための作法は共通しているということなのだと思います。だからというわけではないと思うのですが、この本は私が所属していたゼミでは必読書でした(たぶんゼミの先生の趣味です)。今思うと、「これは小説である」「これは論文である」という分け方に関係なく、「『ことばはおもしろい』ということを体験しよう」という計らいだったのかもしれません。

 

法学部 河村好彦先生の私の一冊

 
『よくわかる民事裁判』(第3版)(有斐閣選書 199)
 山本和彦著, 有斐閣, 2018年
 Maruzen eBook Library
 
 話は、元弁護士の平凡太郎(たいら ぼんたろう)が、伯父の平凡吉(たいら ぼんきち)が残した、家の立退きを求められた訴訟の日記を2050年に見つけたことからはじまります。訴訟の流れに沿った各章の最初にある凡吉の日記を凡太郎が解説することで、民事訴訟全体のイメージをもつことができます。
 コロナウィルスの影響で学習が資料の読込み中心になっていますが、記述からイメージを頭に浮かべられないことも多いと思います。本書には難しいところもありますが、全部分かる必要はありません。民事訴訟を理解することは、民法などの権利を実現するのに不可欠です。興味のある人は、この機会にぜひチャレンジしてみて下さい。
 

理工学部 神藏正先生の私の一冊


『歴史をかえた物理実験』新装復刊
 霜田光一著, 丸善出版, 2017年
 Maruzen eBook Library

 書名の通り現代物理学に大きな影響を与えた実験について紹介している本です。選ばれている分野が非常に限られていること、また、技術的な部分に深入りしすぎている印象があり一般向けとは言いにくいかもしれません。
 しかし、実験には時として世の常識をひっくり返すほどの力を持つこともあるのです。歴史的に最も有名なものはガリレオ・ガリレイがピサの斜塔で行った実験でしょうか。本書で紹介されている実験で私のお勧めはマイケルソン・モーレーの実験です。当時、主張されていた「エーテルの存在」を証明しようとして「失敗」して、それが後にアインシュタインの相対性理論にまでつながる新しい世界観を生むきっかけになったものです。
 

人間共生学部 黒﨑真由美先生の私の一冊


Lonely Planet Tasmania
 Lonely, Planet, et al. 
 Lonely Planet Global Limited, 2018. 
 ProQuest Ebook Central
 
 Lonely Planetというシリーズの旅行ガイドブックをご存知ですか。世界中の国と地域を網羅して、英語版シェアは世界一です。私自身、学生時代からこの一冊をパートナーに地球を歩いてきました。写真の掲載は多くありませんが、個人で旅するのに必要な基本情報が満載です。そして今回特にご紹介したいのが、私の一押しのLonely Planet Tasmaniaです。Tasmaniaは、「太古の自然」が残る地です。加えて、多彩な野生動物、新鮮な食材、話題のMONA美術館等々。海外旅行ができないコロナ禍、ぜひこの一冊をダウンロードしてみてください。英語版ならば、語学の勉強にもなります。さあ、バーチャル旅行に出かけましょう!


 

栄養学部 細山田洋子先生の私の一冊

 
『史記列伝 一』(平凡社ライブラリー 714)
 司馬遷著; 野口定男訳, 平凡社, 2010年
 KinoDen

 「乱世における様々な個々人の姿が活写されている。策略、執念、残酷さ、気高さ、忠誠心、等々、史書というより、人間ドラマの書とさえ言える」裏表紙より抜粋。
 私が、初めて史記列伝を手に取ったのは、高校生の時でした。校内の図書館司書の方から勧められたことがきっかけで、史記関連の書籍を読むようになりました。
 史記列伝の登場人物や物語は、現代を生きる私に対しても、手本とすべき基本姿勢や、自分の行動を省みる機会を与えてくれます。理不尽な事柄への不満や怒り、自分自身の行動や感情に対する疑問などなど、日々の様々な出来事をこの歴史書にぶつけています。
 

教育学部 小原豊先生の私の一冊


『思考の整理学』(ちくまセミナー 1)
 外山滋比古著, 筑摩書房, 1986年
 ※こちらの書籍は電子ブックではありません

 あえて説明の必要すらない程の名著です。簡単な内容を難しく書く識者は山のようにいます。しかし反対に、高度なことを簡単簡潔にまとめられる方は稀有です。本書のシンプルで歯切れの良い文章や巧みな比喩はリベラルアーツの本質を鋭く突いている。大学初年度の学生諸君には是非読んでもらいたい必携の一冊です。なお著者の外山滋比古氏は先日、2020年7月末日にご逝去された。故人のご功績を偲び、心からご冥福をお祈りすると共に、氏の残した知的営為の要領を次世代に伝えることを改めて決意する次第です。若き学生諸君、もし本書を未読なら、必ず読んで欲しい。皆さんが知的自由になるために。

 

看護学部 渡辺真弓先生の私の一冊


医学探偵の歴史事件簿 ファイル2』(岩波新書 新赤版 1529)
 小長谷正明著, 岩波書店, 2015年
 Maruzen eBook Library
 
 中臣鎌足は脊髄障害だった?ブラディメアリの想像妊娠は実は下垂体腫瘍だった?史実に残る歴史上人物の疾患症状を内科医の目から改めて見直した一冊。例えば、冷戦時にレーガン大統領が「ロシアを爆撃します」と言うテスト放送を行ったことがある。際どいジョークとして処理されたが、実はレーガン大統領は軽度認知障害だったと言う。しかし一方のソ連軍は、チェルネンコ書記長が呼吸不全でとても対応できる状態ではなかった。両首脳の疾患のせい(おかげ?)で、歴史は大きく変わっていたかもしれないのだ。このようなエピソードが満載で、わくわくしながら読めるのに、歴史だけでなくフィジカルアセスメントまで学ぶことができる珠玉の一冊。

 

図書館スタッフ 澤野絢香さんの私の一冊


いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか アーサー版 ―変容する中世騎士道物語―』
 岡本広毅, 小宮真樹子編, みずき書林, 2019年
 Maruzen eBook Library
 
 「アーサー王伝説」は元々ブリテン(イギリス)の伝説だが、今や日本でもその認知度はなかなか高い。物語自体を知らなくても「アーサー」「マーリン」「聖剣エクスカリバー」などの名前を知っている人は多いのではないだろうか。なぜならこれらのものは日本でも漫画・アニメ・映画・ゲームと言った媒体で使われているからだ。
 本書は夏目漱石の和製アーサー王伝説『薤露行(かいろこう)』や『ドラクエ』『Fate』などを取り上げながら何故異国の伝説が日本のサブカルチャーに取り入れられたかを探る1冊となっている。巻末に人物相関図や一次資料の紹介もあるので、元の物語を知りたい人にもオススメ。